位置検索端末の貸与で変わる徘徊高齢者の見守り、新潟市の家族支援に学ぶ地域の備え方

NEWS ANALYSIS · 2026年10月15日

位置検索端末の貸与で変わる徘徊高齢者の見守り、新潟市の家族支援に学ぶ地域の備え方

ニュースの概要

新潟市が、徘徊のおそれがある高齢者を介護する家族を支えるため、位置検索用の端末を貸し出す事業を案内している。端末を高齢者の持ち物や靴に入れておけば、行方が分からなくなったときに家族が居場所を探せる仕組みである。認知症の人が外出して戻れなくなる事案は全国で続いており、警察への届け出だけでは捜索が間に合わない場面も少なくない。購入ではなく貸与とすることで、費用が負担になって利用をためらう家庭にも届きやすくする狙いがうかがえる。対象となる条件や申し込み方法は、市の案内で確認する必要がある。

引用元: 徘徊高齢者の家族支援(位置検索用端末の貸与)(新潟市)

分析・見解

行方不明届は年間1万8000人超、数時間の遅れが命を分ける

警察庁の統計では、認知症またはその疑いで行方不明届が出された人は、近年、年間1万8000人から1万9000人前後で推移している。ほとんどは数日以内に見つかる。しかし、発見が遅れて亡くなった例も毎年報告されている。捜索で重要なのは、いなくなってから最初の数時間である。位置検索用端末の貸与は、この時間を縮めるための道具として位置づけられる。

端末は持ち歩いてもらえて初めて役に立つ

GPS(=人工衛星を使って場所を調べる仕組み)の端末は小型化が進み、靴の中敷きや財布に入れられる製品もある。それでも弱点は残る。本人が嫌がって置いていく。充電を忘れる。電波の届きにくい建物の中では誤差が出る。つまり、性能よりも「日常の持ち物に溶け込ませる工夫」が成否を分ける。購入ではなく貸与にすれば、家族は費用を気にせず試せる。合わなければ別の形に切り替えることもできる。この「お試し」の性格こそ、貸与方式の利点だと考える。

技術だけでは足りない、地域の目との組み合わせ

福岡県大牟田市は、認知症の人が行方不明になった想定で、住民が声かけをする模擬訓練を20年以上続けてきたことで知られる。ここで示されたのは、端末が居場所を教えても、現場で声をかけて安全に誘導する人がいなければ解決しないという事実である。位置が分かることと、無事に連れ戻せることは別の話だ。端末の情報を、家族だけでなく地域包括支援センターや協力者と、どこまで共有できるかが次の論点になる。

見守りと監視の境目をどう引くか

位置を常に確認できる仕組みは、使い方によっては本人の自由を狭める。本人の同意が得られない場合に、家族が独断で追跡してよいのか。倫理面の議論は国内でも続いている。現実的な線引きは、普段は見ず、所在不明になったときだけ使うという運用ルールを家族で決めておくことだろう。本人が元気なうちに話し合っておくのが最善である。

ビジネスへの影響

介護事業者は制度の案内役になれる

ケアマネジャーや訪問介護の事業者は、家族から外出の不安を最初に聞く立場にある。市の貸与制度の存在を知らせ、申請の手順を一緒に確認するだけでも、家族の負担は大きく減る。制度の対象条件や貸与期間は自治体で異なるため、担当窓口の最新の案内を事前に集めておきたい。説明資料を一枚にまとめておけば、担当者ごとの案内のばらつきも防げる。

施設・小売・交通の現場に求められる備え

デイサービスや商業施設、鉄道・バスの事業者にとっても無関係ではない。利用者が敷地外へ出てしまう、店内で迷う、といった場面は日常的に起こる。対応手順を決めておき、警察や家族への連絡窓口を文書にしておく。従業員向けの声かけ研修は半日程度で実施できる。事故が起きたときの責任の面でも、事前の備えは事業者自身を守ることにつながる。

見守りサービスを提供する企業への示唆

自治体の貸与は、民間の見守り市場にとって入口にもなる。貸与で慣れた家族が、期間終了後に自費で継続する流れが考えられる。そのため、月額費用の分かりやすさ、電池の持ち、通知の見やすさが選ばれる条件になる。個人情報の扱いを平易に説明できる企業が信頼を得る。自治体と組む場合は、利用データを匿名化して地域の傾向把握に使うなど、公共の価値につなげる提案が有効である。

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