63歳の祖父が孫育休暇で娘を支援 祖父母の休暇制度は企業の人材戦略をどう変えるか

NEWS ANALYSIS · 2026年10月12日

63歳の祖父が孫育休暇で娘を支援 祖父母の休暇制度は企業の人材戦略をどう変えるか

ニュースの概要

働く祖父母が孫の世話をするための「孫休暇」を設ける企業が広がっている。ABEMA TIMESは、職場で最年長の63歳の男性が「孫育休暇」を取り、里帰り出産をする娘を支えた事例を伝えた。子どもの急な発熱での送迎や、親の通院・健診への付き添いなど、祖父母の手が必要になる場面は多い。ただ、祖父母自身も働いているため、これまでのように個人の善意と有給休暇のやりくりだけでは対応しにくくなっている。そこで企業が、孫の人数などに応じて取得日数を定める形で、制度として後押しし始めている。

引用元: 63歳の祖父が「孫育休暇」を取得、娘の里帰り出産を支援(ABEMA TIMES)

分析・見解

「育休は親だけのもの」という前提が崩れ始めている

子育て支援の制度は、長く親本人を対象に設計されてきた。育児・介護休業法が定める育児休業も、対象は子の親である。ところが現実の子育ては、親二人だけで回っているわけではない。保育園から呼び出しの電話が来る日、親が健診や通院で動けない日、里帰り出産で上の子の世話が必要になる日。こうした「穴」を埋めてきたのは、たいてい祖父母だった。孫育休暇は、この見えにくい担い手に、初めて制度上の名前を与えたものと言える。

63歳が取得した意味は「年齢の壁」を越えたこと

今回の事例で目を引くのは、取得者が職場で最年長の63歳だった点だ。定年延長や再雇用が進み、60代で働き続けるのは珍しくなくなった。一方で、若い同僚が多い職場では「自分だけ休みたいとは言いにくい」と感じる人も多いだろう。最年長の人が堂々と取ることで、後に続く人の心理的な負担は下がる。制度の有無より、誰が最初に使うかが利用率を左右する。これは男性の育休が広がった過程でも見られたことである。

個人の厚意から会社の仕組みへ移す利点

これまで祖父母の支援は、有給休暇や急な欠勤でまかなわれてきた。有給休暇は本来、自分の休養のためのものだ。孫の世話に使い切れば、本人の健康管理に回せる日が減ってしまう。上司に事情を説明する手間も、毎回かかる。専用の休暇があれば、理由を堂々と伝えられ、職場も人員の調整を事前にしやすい。突然の欠勤より、計画された不在のほうが、周囲の負担は小さい。

公平性という新しい論点

ただし課題もある。孫がいない人、子どもがいない人、親の介護を担う人との間で、不公平感が生まれかねない。孫の人数で日数を変える設計は、孫のいない社員から見れば「恩恵の差」に映る。大切なのは、孫育休暇を特別扱いにせず、家族の事情に応じて休める仕組み全体の一部として位置づけることだ。介護休暇や看護休暇と並べ、「家族を支えるための休み」と説明できれば、納得は得やすい。さらに、祖父母の支援は出産や育児の負担を和らげ、二人目以降をためらう気持ちを減らす効果も期待できる。少子化対策の一端を、企業が担う形になる。

ビジネスへの影響

制度を作る前に決めておきたい三つの設計ポイント

導入を考える企業は、まず対象と日数を決める必要がある。孫の人数で日数を変えるのか、一律にするのか。有給か無給か。取得の単位は日か、時間か。急な発熱への対応が目的なら、半日や時間単位で使えるほうが実態に合う。里帰り出産のように数日から数週間続く場合は、連続取得も認めたい。申請期限を緩め、事後申請も認めると、急な呼び出しにも対応できる。証明書類を求めすぎると使いにくくなる点にも注意したい。

人手不足の時代に、ベテランを引き留める力になる

60代の社員は、技能と経験を持つ貴重な戦力である。その人たちが孫の世話のために退職や勤務時間の短縮を選べば、会社の損失は大きい。孫育休暇は、費用に比べて引き留めの効果が大きい施策になりうる。求人でも「家族を大切にできる職場」を示す具体的な材料になる。休暇中の業務を誰がカバーするかを事前に決めておけば、特定の人にしか分からない仕事を見直すきっかけにもなる。

小さく始めて、使われ方を見ながら直す

いきなり完璧な制度を作る必要はない。まず試行期間を設け、取得者の声と周囲の声の両方を集める。社内の最年長層から取得例を出し、体験談を共有すると、使いやすい空気が生まれる。半年ごとに日数や条件を見直すとよい。経営者にとっての要点は、孫育休暇を福利厚生の目玉としてではなく、年齢を問わず働き続けられる職場づくりの一部として扱うことだ。

関連記事