
NEWS ANALYSIS · 2026年10月20日
ひきこもり家族支援外来が北大病院に新設、本人でなく家族を診る意味
ニュースの概要
北海道大学病院が、ひきこもり状態にある人の家族を対象にした専門外来を新設し、10月から予約の受け付けを始めました。特徴は、診察の中心が本人ではなく家族に置かれている点です。本人が病院に来られない場合でも、家族だけで相談を始められます。独自に組み立てたプログラムを使い、家族が本人とどう関わるか、家庭内の負担をどう減らすかを学ぶ内容だとされています。ひきこもりの相談は、本人が動き出すまで何も進まないと思われがちでした。今回の外来は、その前提を変えて、まず家族の状態を整えるところから支援を始める試みです。大学病院が正面から家族支援を掲げた点が、全国の相談現場からも注目されます。
引用元: 北大病院に『ひきこもり家族支援外来』新設―独自プログラムで”家族の支援”に特化―10月から予約受付〈北海道札幌市〉(FNNプライムオンライン)
分析・見解
本人が来られなくても始められる診療の設計
ひきこもりの相談で最初に突き当たる壁は、本人が受診できないことです。従来の外来は本人の診察を前提にしていました。そのため家族が疲れ果てて相談に来ても、本人不在では何もできないという状況が起きていました。
今回の外来は、この前提を外しています。家族だけで予約でき、家族自身が学ぶ場として設計されています。診療の対象を変えることで、これまで支援の外に置かれていた人たちを、初めて医療の入り口に迎え入れた形です。
家族への教育が本人の変化につながる理由
家族向けの支援には、海外で実績のある考え方があります。心理教育(=病気や状態について正しく学ぶ取り組み)と、関わり方の訓練です。たとえば依存症の分野では、CRAFTという家族向けプログラムがあります。家族が対応を変えると、本人が相談につながる割合が高まるという報告が複数あります。
ひきこもりも同じ構造を持ちます。叱る、励ます、腫れ物に触るように避ける。どの対応も善意から出ますが、結果として本人を追い詰めることがあります。家族が適切な声かけを身につけるだけで、家庭内の緊張が和らぎ、本人が外とつながる余地が生まれます。
長期化と高齢化が突きつける待ったなしの事情
内閣府の調査では、ひきこもり状態にある人は全国で推計146万人にのぼります。40代以上も多く、親が80代、本人が50代という8050問題(=高齢の親が中高年の子を支える状態)が現実になっています。
親が倒れてから動くのでは遅すぎます。家族が元気なうちに、介護や収入、住まいの見通しまで含めて相談できる窓口が必要です。大学病院が家族を入り口にしたことは、時間との勝負という実態に合っています。
一病院の試みで終わらせないための課題
課題は広がりです。専門外来は人も時間も限られ、札幌まで通える家族にしか届きません。地域の保健所や自治体のひきこもり支援センター、民間の家族会と、どう役割を分けるかが問われます。
オンライン面談や、プログラムの内容を地域の支援者に伝える研修ができれば、一つの病院で得た知見が全国に広がります。今回の外来は、その型を作る実験と見ることができます。
ビジネスへの影響
従業員の家族の悩みは職場の課題でもある
ひきこもりは、働く人本人の問題だけではありません。社員の子どもや兄弟が長く家にこもっている、というケースは珍しくありません。こうした悩みは職場で話しにくく、集中力の低下や急な休み、介護離職の引き金になることがあります。
人事や総務の担当者は、家族の相談先として、この種の専門外来や自治体の窓口を一覧にして社内に周知しておくと役に立ちます。費用はほとんどかからず、安心して働ける環境づくりにつながります。
支援サービスを作る側が学べる設計の考え方
今回の外来は、利用者を本人ではなく、困っている周囲の人に置き直したことが新しい点です。これは医療に限らず、福祉、教育、民間サービスにも応用できます。
本人が動かないことを前提に、先に動ける人を支える。この発想は、不登校、介護、依存症など近い分野の事業設計にも使えます。サービスの対象を見直すだけで、新しい需要が見えてくることがあります。
自社サイトや相談窓口での情報整備のすすめ
相談者の多くは、どこに連絡すればよいか分からず、夜間にインターネットで調べます。自治体、医療機関、企業の窓口は、予約の取り方、費用、対象者を平易に書いたページを用意すべきです。専門用語を減らし、家族だけでも相談できると明記するだけで、最初の一歩の重さは大きく下がります。